AI活用ルールは権限3層で決める
今井雄大・公開 ・いまある環境でできる
この記事の要点
AIに何を任せ、何は人が判断するか。権限設計の手順を実例つきで整理しました
株式会社b-jam代表の今井雄大です。
b-jamは私1人の会社で、実務の多くの下ごしらえをAIエージェントに任せています。だからこそ日々感じているのは、AIに「何を任せていいか」を決めないまま使い始めると、あとで必ずどこかでつまずくということです。相談を受ける中でも、機能の話より先に「この作業はAIに任せていいんでしたっけ」という権限の話に戻ることが増えてきました。
この記事に書いてあること
- AI活用ルールを考えるとき、最初に決めるべきは「機能」ではなく「権限」だという考え方
- 業務を3つの層に分けて権限を設計する、シンプルな枠組み
- 自社で運用している構造を例に、読者企業のルールづくりへ翻訳する手順
「使い方」は広まるのに「決め方」が追いつかない
生成AIが使える範囲は、この数か月だけでもかなり広がりました。多くの会社で、部署ごとに思い思いのAIツールを試している段階だと思います。
ここで抜け落ちがちなのが「決め方」です。誰がどこまで判断していいのか、外部に出す前に誰の確認を挟むのか。ツールの導入は進んでも、この取り決めは後回しになりやすいと感じています。困るのは使い始めたあとです。何かが起きてから慌ててルールをつくることになります。
現場でよく聞くのは、部署ごとにバラバラの基準でAIを使い始めてしまい、あとから「これは誰が責任を持つ話だったのか」が分からなくなるという相談です。ツールを止める必要はありません。止めるべきは決め方を後回しにすることだと思っています。
権限設計は「できるか」でなく「誰が承認するか」で考える
AI活用ルールをつくるとき、つい「このAIは何ができるか」から考えたくなります。ただ本当に決めるべきはその先です。「この作業の結果を誰が承認してから外に出すか」。
この問いに答えるには、業務を1つずつ機能で分類するより、リスクの性質で分けるほうがシンプルです。見るべき軸は主に2つで、外部に影響するかどうかと取り消しがきくかどうかです。部署やツールの単位でルールをつくると、業務が部署をまたぐたびに例外が増えていきます。リスクの軸で考えると、新しい業務が来ても同じものさしで判断できます。この整理に落ち着くまで、私自身も何度か迷いました。
b-jamで運用している権限の3層
b-jamの中では、業務を大きく3つの層に分けています。
1つ目は社内で完結する定型的な作業です。ここはAIが実行してよい領域にしています。
2つ目は外部に出る文書や発信です。メールの下書きや記事の草稿はAIがつくりますが、送信や公開のボタンを押すのは必ず人です。AIの仕事は下書きまでと決めています。
3つ目は会社の根幹に関わる戦略文書や取り消しの効かない操作です。ここはAIが直接書き換えられない場所に置いていて、変更は承認の列に一度並べてからでないと反映されない仕組みにしています。
外に出す前には、決めた基準で成果物を採点する仕組みも挟んでいます。基準に届かないものは外に出しません。
上に行くほど外部への影響と取り消しにくさが増えるので、人の関与も厚くしています。権限を決めるときの基準は、部署やツールの単位でなく、この3層のどこに当たるかです。そのほうが新しい業務が増えても迷いにくくなります。
読者企業へ翻訳する権限設計の手順
自社に当てはめるなら、次の順番で決めていくとつくりやすいと思います。
- 業務を洗い出す。いま現場でAIを使っている場面、これから使いたい場面を一度リストにします
- リスクの軸で仕分ける。外部に出るか、取り消しがきくかの2軸で1つずつ振り分けます
- 3層に対応する権限を決める。「実行してよい」「下書きまで」「人だけが判断」の3つに業務を割り当てます
- 外部に出るものには必ず人の承認を挟む。承認者と承認のタイミングを決めておきます
- 根幹の文書は直接触れない場所に置く。経営計画や契約書のたたき台をAIに任せる場合も、確定は人の手に残します
- 基準を1つ決めて、定期的に見直す。ルールは一度つくって終わりでなく、業務が増えるたびに当てはめて確認します
最初から完璧な線引きを狙わなくていいと思っています。まず仮の3層で割り当ててみて、現場で回しながら「これはやっぱり2層目だった」と直していくほうが、机上で悩み続けるより早く実態に合ってきます。
よくある失敗パターン
一般的によく聞くのは、権限を最初から細かく決めすぎて現場が使いにくくなり、結局誰も守らなくなるパターンです。承認の手続きが重すぎると、現場は正規のルートを避けて別の方法で済ませてしまいます。逆に、何も決めずに現場任せにして、外部に出るはずでなかった情報がそのまま出てしまうケースもあります。
どちらも「決めすぎ」と「決めなさすぎ」という両極端の話で、ちょうどいい線をどこに引くかは会社によって違うはずです。3層のどこに何を割り当てるか、まずは仮でいいので決めてみて、動かしながら直していくのが現実的だと思っています。
まとめ
AI活用ルールをつくるときに大事なのは、ツールの機能を並べることではなく、権限をどう設計するかです。実行してよい領域、下書きまでの領域、人だけが判断する領域。この3層で業務を仕分けるだけで、新しい使い方が増えてもルールが崩れにくくなります。権限の話は地味に見えるかもしれませんが、AI活用が広がるほど効いてくる部分だと思っています。
ツール選びより先に決めることがあるという話は、以前「AIの道具選びは本質じゃない」(「AIの道具選びは本質じゃない」)にも書きました。今回はその「決めること」の中身を権限という切り口でもう少し具体的にしています。
自社を16のAIエージェントで動かしている実際の構造は「1人法人を16のAIエージェントで動かす実運営ログ」(https://note.com/bjam/n/n390cace8dcac)にまとめています。
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