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集計3時間が数十秒。部材メーカーの月次が変わるまで

今井雄大・公開 ・Microsoft 365 Copilot

この記事の要点

中堅部材メーカーの月次集計と原価〆をいまあるCopilotに貼るだけで変えた2週間の想定ケース。

「今月も、数字は出そろった。」 月次会議の前夜、経営企画の担当者がそうつぶやきます。集計は間に合った。けれど「で、どうするか」を考える時間は今月も残りませんでした。

これはそんな月次を2週間で変えた中堅メーカーの記録です。

本稿の主役は、従業員150〜200名ほどの産業部材メーカーです。受発注と生産管理を回し、毎月の売上集計と原価〆を締める。BtoBの製造業なら、どこにでもある景色だと思います。

ただしこの会社は完全な想定ケースで実在の企業ではありません。登場する数値もAI活用支援をしてきた中で多いパターンをデモ用に用意した例示です。それでも商談やセミナーで実演するたび、担当者の方が「これ、うちの話だ」と前のめりになります。それくらい、この情景はどの現場にも共通しています。

※想定ケース。社名・数値はすべてデモ用の例示です。

この記事でたどること

  • 「集計まで」で力尽きる月次の、静かなストレス
  • 新しいツールを買わずに、いまある環境で仕組みをつくる考え方
  • 2週間で「どこを、どう減らしたか」の積み重ね

「集計はできる。でも、打ち手まで届かない」

この会社の月次は静かに重くなっていました。

売上のExcelは顧客セグメント別・製品カテゴリ別・地域別に生のまま並んでいます。ここから手作業でピボットを組み、グラフにし、コメントを付ける。経営会議の資料が形になるまで、毎月2〜3時間かかっていました。

原価の月次〆はもっと長い戦いです。チェックリストを目視で追い、差異を拾い、考察まで書き上げる。営業日にして5〜8日。締まった頃には、次の月がもう始まっています。

問題は時間の長さだけではありません。「なぜこの月だけ動いたのか」「で、どうするのか」という一番大事な問いに、たどり着く前に力尽きる。集計まではできる。でも、打ち手まで届かない。これが月次の正体でした。

しかも、進め方はベテラン1人の頭の中にありました。どこを疑うか、どの差異が危ないか。その勘は明文化されていません。その人が休むと、月次が止まる。誰も口にしないけれどみんなが気づいている。そういう静かなストレスが現場には積もっていました。

新しいツールは、買わなかった

こういう話になると、専用のBIツールやRPAの導入が候補に挙がりがちです。私たちはその前に一度立ち止まることをおすすめしています。

理由はシンプルで、この会社にはすでに Microsoft 365 があったからです。契約済みの環境の中に、Copilot という生成AIが最初から入っている。新しく買い足すのではなく、いまある道具に「貼るだけ」で仕事を任せられるなら、そのほうが導入も運用もずっと軽い。Google Workspace を使っている会社なら、同じことを Gemini で組めます。

重い初期投資も保守し続ける専用システムも要りません。私たちが2週間でやったのはこの会社の実際のExcelに合わせて「頼み方」をつくり込むことだけでした。

大げさな刷新ではありません。いまある環境のまま、月次の「あの作業」から手をつける。始まりはそれだけです。

2週間で、どこをどう減らしたか

ここからが本題です。結論を先に置かず、2週間で何を積み重ねたかを週単位でそのままお見せします。使ったのは追加ツールなしの「貼るだけプロンプト」だけです。

Week1|売上集計を、貼って数十秒に

最初の週は、毎月2〜3時間かけていた売上集計に手をつけました。12ヶ月分の売上Excelを Copilot に読ませ、次の指示を1つ貼るだけです。

あなたは産業部材メーカーの経営企画担当を支援する財務アナリストです。
このブックの「売上データ」シートと「部門別経費」シートを分析し、経営会議で使える形で報告してください。

【分析対象】
- 売上データ:年月×顧客セグメント(直販OEM/商社経由/補修・スポット/新規)×製品カテゴリ×地域(単位:千円、2025年4月〜2026年3月)
- 部門別経費:年月×部門×科目(単位:千円、同期間)

【やってほしいこと】
1. 顧客セグメント別・月次の売上推移を集計し、通常レンジから外れる「異常な動き」を月単位で3点以内に絞って検出する。各異常について、平常月の何倍/前年同水準比何%かを数値で示す。
2. 検出した各異常について、考えられる要因仮説を2つずつ提示する(断定せず仮説として)。
3. 物流費(経費シート)の上期(4-9月)と下期(10-3月)を比較し、増減率を算出する。
4. 粗利率の推移(売上に対する原価系経費の比率)を四半期ごとに出し、トレンドを評価する。
5. 最後に「経営者が今すぐ検討すべき打ち手」を3案、優先度つきで提案する。

【出力形式】
- 冒頭に3行サマリー(結論先出し)
- 異常検知は表(月/顧客セグメント/数値/平常比)で
- 数値は千円・%を明記
- 専門用語は避け、経営層が3秒で掴める日本語で

貼って数十秒。返ってきたのは集計表ではなく「発見」でした。8月に補修・スポット部品の受注が平常比 約2.9倍に跳ねていると表で拾ってくる。11月には主要取引先の発注が前年同水準比 約▲42%に落ち込み、「顧客側の在庫調整では」と要因仮説まで添えてくる。さらに物流費が下期に上期比 +18%、粗利率は四半期を追うごとに漸減、と原材料高のトレンドも指摘し、打ち手を3案まで並べてきました。

集計に費やしていた時間が、まるごと消えた瞬間です。

Week2|月次〆の点検を、貼って数十秒に

Week1で「貼るだけ」の手応えが現場に残ったところで、2週目は本丸の月次〆に進みました。今度はチェックリストと当月試算表を読ませ、点検そのものをAIに任せます。

あなたは経理・経営企画を支援する財務アナリストです。
このブックの「月次決算チェックリスト」シートと「当月試算表」シートを読み、月次〆の状態を点検してください。

【手順】
1. チェックリストから、ステータスが「未完了」「差異あり」「未着手」「保留」のいずれかの項目をすべて洗い出す。
2. 各項目を経営インパクトとブロッキング度でリスク評価し、高→中→低の順に並べる。
   - 金額差異の大きさ、後工程を止めるか、承認・締めを遅らせるかを基準にする。
3. 並べた項目を次の列を持つ表で出力する:
   リスク順位 / No / カテゴリ / チェック項目 / 担当 / 現状(ステータスと備考の要約) / 推奨アクション
4. 当月試算表を参照し、前月から大きく動いた科目(特に物流費・原材料費)を金額・増減率つきで指摘する。
5. 最後に「今月の経営考察」として、物流費の急増・粗利への影響・受注動向への所見を3〜4行で、経営者が次に何を判断すべきかが分かる言葉でまとめる。

【出力ルール】
- 数値は千円単位、増減は前月比の率もつける。
- 推測には「想定」と明記し、断定しない。
- 全体をMarkdownの表+短い文章で簡潔に。

これも数十秒でした。未完了・差異の7項目を、リスクの高い順に並べてくる。有償支給材の受払が未連携、部材の棚卸差異が▲1,250千円、物流費が前月比+18%で未分析、売掛の入金が320千円未達。それぞれに「次に何をすべきか」が付いています。

一番の肝はその先です。試算表まで読んで「物流費の急増が粗利を圧迫している。ここが今月の〆のボトルネック」という経営考察を、人が書く前にドラフトしてくる。ベテランの頭の中にあった「どこを疑うか」が、誰が回しても同じ品質で出る形になりました。

集計3時間が、数十秒になった

2週間の前後を、素直に並べてみます。

月次の仕事 Before After
売上集計 手作業ピボットで2〜3時間 貼って数十秒。異常検知・要因仮説・打ち手3案まで
原価〆の点検 5〜8営業日 点検数十秒。リスク順の整理+経営考察ドラフトまで
属人化 ベテラン1人に依存 誰が回しても同じ3手(開く→貼る→確認)

※上記の時間・数値はいずれも想定ケースのデモ用例示です。

集計が消えただけではありません。これまで手が回らなかった「考察」と「打ち手」が、月次の成果物として初めて手前に立ち上がりました。作業の月次が、判断の月次に変わった、と言ってもいいと思います。

正直に言うと、AIは「仮説」しか出せない

ここで過大な約束はしたくありません。

AIが返すのは、あくまで「仮説」です。8月のスパイクも11月の落ち込みも、「たぶんこういう理由では」という当たりをつけてくれるだけで、確定させるのは人の仕事です。だから私たちは要因を仮説として出させ、推測には「想定」と明記させています。最終判断と確定値の承認は、必ず人が握る。ここは外しません。

貼れば毎回100点が返るわけでもありません。データの並びによっては返答が浅くなることもあり、そのときは添付し直して聞き方を変える、という保険の手順も用意しておきます。

AIが得意なのは、「どこが異常か」を高速で拾い、点検を速く均質にすること。3時間の集計をゼロにして、その時間を判断に振り向ける。効果の本体はそこにあります。信頼できる仕組みは、できないことを正直に線引きするところから始まります。

浮いた時間を、集計ではなく「打ち手」へ

では、浮いた時間で何をするのか。ここがこの話の本当のゴールです。

集計に消えていた月2〜3時間と、〆に取られていた数営業日。これが空けば、その余力はそのまま別の仕事に回せます。11月に落ちた主要取引先へどう動くか。8月のスパイクは一過性か、それとも新しい需要の芽か。物流費の構造をどう見直すか。どれも集計の手を止めていては手が回らなかった問いです。

私たちはこれを「Free-up → Reinvest」と呼んでいます。AIで作業を手放し、浮いた余力を打ち手と探索へ再投資する。効率化そのものが目的ではありません。効率化で生まれた時間を、本業のどこに戻すか。そこまで含めて、初めて月次を変えた意味が出ます。

貴社版の「仕組み」を、2週間でつくる

この記事でお見せしたのはいまある Microsoft 365 / Google Workspace の中で、月次の「あの作業」を貼るだけに変えていく2週間です。汎用のプロンプトは今日からでも動きますが、本当に効くのは貴社の実際のExcelとチェックリストに合わせ込んだ「貴社版」です。

b-jam には、まず小さく試すための入口があります。STEP01|2週間で、貴社の業務に合わせたお試しエージェントを1個構築する。 今回で言えば「月次の売上集計」か「原価〆の点検」のどちらか、効きそうな1つを選び、貴社のデータで回る仕組みに仕立てます。導入して終わりではなく、貴社が自分で回せる状態までを2週間で見せます。料金や進め方の詳細は、b-jamのHP(→ https://b-jam.co.jp )でご案内しています。

「うちのデータ構造でも動くのか」を確かめたい方は、お気軽にご相談ください。

私たちがどんな考えでこの仕事をしているかは、代表の自己紹介記事(→ 「自己紹介|自分のSaaSがいまある環境でつくれた話」 )や、b-jam自身を16のAIエージェントで動かす実運営ログ(→ https://note.com/bjam/n/n390cace8dcac )にも書いています。あわせて読んでいただけると、この2週間の背景が伝わると思います。

ビジネスをジャムろう。AIで動く仕組みをつくる。

出典・参考リンク

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