穴埋め表1枚で顧客の要件を引き出す
この記事の要点
言葉にならない要望をAIと整理する2つの型
32項目のヒアリングシートに記入したのは17項目。 残りは「おまかせ」と書いただけ。 追加質問ゼロの往復2回でAIが実行まで進みました。
この記事に書いてあること
- 言葉になっていない要望をAIと棚卸しする方法
- 対話型と穴埋め型の使い分け
- 整理した要件を実行につなげるときの注意点
「何がしたいか分からない」は珍しくない
AI活用の研修や伴走では「何をどう頼めばいいか分からない」という声が出ることがあります。改善したい気持ちはあっても対象業務や困りごとがまだ言葉になっていない状態です。
これは要望があるのにAIが実行しない問題とは少し違います。前回の記事『いい感じで』ではAIは動かないで扱ったのは要件が見えてから先の話でした。今回はその一歩手前です。
要件をうまく説明できない人に長いプロンプトを書いてもらうのは、なかなか厳しいですよね。そこでAIに答えを出してもらう前に、質問する側を任せてみました。
「一緒に棚卸しして」の一言で何が起きたか
実験では中小製造業の経理・購買事務を想定し、Copilotに次のように頼みました。
仕事のどこをAIに手伝ってもらえるか、質問しながら一緒に棚卸しを手伝って
こちらから指定したのはこの一文だけです。するとCopilotは業務名・頻度・時間・面倒度・AI活用余地という5つの軸を自ら提示しました。質問は一度に並べず1問ずつ。5つの業務を答えると内容を業務カードにまとめ、面倒度とAI活用度を星で評価しました。
その後はA・B・Cの優先順位をつけ、各業務の削減余地を2〜4割と見積もりました。これは実際の削減実績ではなくCopilotによる効果見積もりです。それでも何から試すかを話し合う材料にはなります。
最後に「次回別チャットで相談したいので短くまとめて」と頼むと持ち運び用の要約も作れました。人が最初から整理項目を考えなくても、AIに型を出してもらいながら少しずつ決めていけます。
対話が苦手な人には「穴埋め表」という型がある
1問ずつ答える方法は考えを整理しやすい一方、やり取りが長く感じる人もいます。そんなときは必要な質問を最初にまとめて出してもらいます。まず「毎月の集計表を作ってほしい」のようなやりたいことを1行で伝え、続けてこう頼みます。
この依頼を正確に実行するために必要な情報を、穴埋め表(項目・質問・私の回答欄)で一度に全部出して。埋めて返したら実行して
実験ではこの依頼に対して32項目のヒアリングシートが一括で提示されました。サンプル回答も付いています。32項目と聞くと正直ちょっと重く見えます。ただ全部を埋める必要はありません。
17項目だけ記入し、残りには「おまかせ」と返しました。それでも追加質問はなくAIはすぐ実行へ進みました。往復は2回です。完成した表計算ファイルには要件の控えとなるメモシートも入っていました。
何を頼むかから話しながら考えたい人には1問ずつの棚卸し型が、頼みたいことは決まっていて要件を一気に出したい人には穴埋め表型が合いそうです。後者を使うときは「書ける分だけで大丈夫です。残りはおまかせと書いてください」と添えると取り組みやすくなります。
要件が固まった先は前回書いた
棚卸しで要件が見えても、それだけで成果物が出るとは限りません。AIが確認や設計を続け、実行に移らないことがあります。穴埋め表の依頼文は末尾に「埋めて返したら実行して」という一言を含んでいたので、そこがそのまま実行の合図になっていました。
その段階では「今月分を実際に作ってください」という実行トリガーや「OKと言ったら実行して」という最初の契約が必要です。詳しい実験結果と指示文は『いい感じで』ではAIは動かないにまとめました。
要件を引き出す工程と実行へ切り替える工程は分けて考える。この区切りがあるだけでもAIとのやり取りはかなり進めやすくなると思います。
研修・伴走で持ち帰ってほしいこと
AI活用を始める人に、最初から要件をきれいに言葉にする力まで求めなくてよいとb-jamは考えています。業務をよく知る人でも改善案を整理して説明するのは別の作業です。そこを宿題にすると着手前に止まりやすくなります。
人が担うのは日々の仕事について答えることです。質問の順番や整理の形式はAIに任せられます。対話型と穴埋め型を渡し、本人が答えやすいほうを選んでもらう。まずはそれで十分かもしれません。
対象業務まで決まっていない場合は「最初の1業務をどう選ぶか」も参考にしてください。小さく試せる業務を選び、要件整理から実行までを一度通してみると次に必要な仕組みが見えやすくなります。
貴社の1つの業務で、要件を引き出す型を一緒に試してみませんか。今の困りごとや伝え方を伺い、対話型と穴埋め型のどちらが合うかを見つけます。
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