最初の1業務をどう選ぶか
今井雄大・公開 ・更新 ・いまある環境でできる
この記事の要点
AI導入で最初につまずく「入口」の選び方を実際の現場経験をもとにした4つの観点で整理しました
「AIを使いたいとは思っているんです。でも、何から手をつければいいのか」
相談の場で、いちばんよく聞く言葉です。技術が足りないのではなく、入口が見えていない。そういうケースがほとんどだと感じています。
実際、中小企業基盤整備機構の2026年3月の調査(全国の中小企業1万社が対象・有効回答1,668社)でも、AI導入の阻害要因の上位は「導入にあたっての高コスト」46.9%・「社内のAIノウハウ不足」42.0%・「社内のAI人材不足」38.8%でした(報告書:https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202603_AI_report.pdf)。「何から始めればいいか分からない」という選択肢はこの調査にはありません。ただ、コストの次に並ぶのがノウハウと人材の不足で、どちらも最初の1業務を決められないことと地続きです。技術の性能より、使い方の入口に壁があると読んでいます。
この記事に書いてあること
- 最初の1業務を選ぶときに見ている4つの観点
- いきなり本丸を狙わない、という選び方
- 実際の現場で、業務資料を先に読み込んでから決めた話
最初の1つが決めにくい理由
AIエージェントができることは、この数か月でも大きく広がりました。ドキュメンテーションもコミュニケーションも、たいていのことはもう任せられます。ただ、何でもできることと、成果に効く「何をやるべきか」が決まっていることは別です。最初につまずくのは機能ではなく、「何から始めればいいか」というところだと思っています。
最初の1業務を選ぶときに見ている4つ
私たちが最初の1業務を選ぶときに見ている観点は、次の4つです。
- 現状のコスト(時間・ストレス)は大きいか。週にどれくらいの時間を取られているか、担当者の負担感はどうかを見ます
- AI実現可能性は高いか。業務がパターン化されているか、必要な入力データが揃っているかを見ます
- 最初の一歩として「小さく確実」か、それとも「本丸」か。必ずしも一番大きな課題から始める必要はありません
- 新機能の予告が出ているものは、待つ選択肢もあるか。近くAIの新機能が来る業務なら、あえて待つという判断も入ります
実際、あるものづくり企業の現場では、合宿形式で丸一日かけて業務のヒアリングをし、あわせて過去の業務資料を読み込んで、①と②の掛け合わせで最初の1業務を決めたことがあります。感覚だけで選ぶのではなく、資料を先に解析してから決める、という順番が効きました。
いきなり本丸を狙わない選び方
もうひとつ大事なのが③です。以前、部材メーカーの月次業務を扱った記事(「集計3時間が数十秒。部材メーカーの月次が変わるまで」)で書いた想定ケースでは、いきなり原価〆という本丸から手をつけず、まず売上集計という比較的小さな一歩から始めました。1週目で「貼るだけで数十秒」という手応えを現場に残してから、2週目に本丸の原価〆に進む、という順番です。
最初の1業務は、必ずしも一番大きな課題である必要はありません。小さな成功体験を先につくり、そこから本丸に進むという順番も、選択肢のひとつです。
正解を探すより動かして確かめる
最初の1業務選びに、完璧な正解を探しすぎなくていいと思っています。まず小さく試す、というのは私自身がいつもやっていることでもあります。4つの観点でいくつか候補を挙げたら、あとは動かして確かめる。実物を見てから、次を判断すればいいんじゃないかなと思います。
その1業務を一緒に決めて動かしてみませんか
最初の1業務を一緒に決めて、実物で確かめるところから始める入口を用意しています。
前回の記事「AIの道具選びは本質じゃない」(「AIの道具選びは本質じゃない」)では、道具選びより先に決めることがあるという話を書きました。今回はその「最初の1つ」を選ぶところを、もう少し具体的にしてみます。
※2026年11月1日訂正:本文中の中小企業基盤整備機構の調査結果の数値を報告書どおりに直しました。
出典・参考リンク
- 中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)報告書(中小企業基盤整備機構)(2026年11月1日確認)
- 中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)調査結果のポイント(中小企業基盤整備機構)(2026年11月1日確認)
同じ環境の記事
・いまある環境でできる
「AIで何かしたい」の前に一番時間を取られている仕事をAIに聞き出してもらう
配られたCopilotで何を頼むか決められないとき。「質問しながら棚卸しを手伝って」の1文で5つの軸の質問が始まり約10分で業務5つと優先順が出た。自社環境の記録。
・いまある環境でできる
AIの下書きはAI自身に向けて書かれる
社内AIの下書きを4つの規則で直し読みやすさと内容の漏れを別に確かめた記録
・いまある環境でできる
AIの下書きに20点をつける理由
AIの下書きを外に出す前に採点している仕組みの実例